ぺんぎんの営巣地

ほとんど個人的な日記だよ。毎日こうしん。

20231030

読んだ。

ヒムラーの右腕で、〈第三帝国で最も危険な男〉と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒに対する暗殺計画をモチーフに歴史小説を書くことの困難さそのものをも読み物へと昇華した作品。

史実を基に小説を書くとしても、その内容のすべてを検証可能な事実のみで構成することはできない。
登場人物が乗っていた車の色くらいなら緻密な調査で裏を取れる可能性もあるけれど、極端な例でいえば心情描写なんて原理的に裏付けのしようがないはず。

この作品では小説としての文章の中に、「僕 (≒ 著者)」による、歴史小説を書くことについての試行錯誤の過程や、細部で架空の史実を創造したり脚色していることへの自覚と苦悩がそのまま文章として織り込まれ、純全たる小説でもなく、単なるエピソードの叙述でもない独特の読み物になっている。

最期に何が起こるのかは動かしようがない前提で、そこに向かって転げ落ちていく展開も読み応え抜群ですごい作品だった。